事業計画書の記入例|創業融資・補助金で「通用する数字」の書き方【項目別ガイド】

「事業計画書、どこに何を書けばいいのか分からない」——白紙のフォーマットを前に手が止まる。これは能力の問題ではありません。問いの立て方を知らないだけです。この記事では、日本政策金融公庫の創業融資や補助金申請で実際に使える事業計画書の記入例を、項目ごとに示します。テンプレートを埋めることがゴールではありません。面談で自分の言葉で語れる計画を作ることがゴールです。
事業計画書は「埋める」ものではなく「考える」もの
記入例を探している人の多くは、模範解答をコピーしたいと考えています。しかし、コピーした計画書は融資担当者や審査員にすぐ見抜かれます。なぜなら、自分で考えていない数字は守れないからです。面談で「この売上予測の根拠は?」と問われたとき、借り物の言葉では答えられません。
記入例の正しい使い方は、答えを写すことではなく「この項目では何を問われているのか」を理解することです。以下、主要項目ごとに、審査で見られるポイントと記入の考え方を示します。
項目別・事業計画書の記入例
1. 創業の動機・事業の概要
ここで審査担当者が見ているのは、経営者としての信頼性です。「儲かりそうだから」ではなく、あなたがなぜこの事業をやるのか、その必然性を書きます。
- 悪い例:「将来性のある市場で独立したいと考えたため。」(曖昧で、誰にでも書ける)
- 良い例:「前職の人材紹介会社で5年間、中小企業の採用支援に携わる中で、地方企業が採用ノウハウを持たないまま費用だけを払う構造を見てきた。この経験と300社の顧客基盤を活かし、成果報酬型の採用支援を始める。」
ポイントは、経歴・実務経験と事業内容が一本の線でつながっていること。ここに整合性がないと、以降の数字すべての信頼性が下がります。
2. 事業の強み・差別化
「丁寧な対応」「高品質」といった言葉は差別化になりません。競合も同じことを言うからです。記入すべきは、あなたにしかない具体的な優位性です。
- すでに確保している見込み客・取引先(契約書・LOIがあれば強い)
- 他社が持たない仕入れルート・技術・資格・独占的な知見
- コスト構造上の優位(なぜ同じ品質を安く、または同じ価格で高品質に提供できるのか)
差別化はコストではなくレバレッジとして語ります。「安さで勝負」ではなく「この強みがあるから利益率を確保しつつ選ばれる」という論理です。
3. 販売計画・売上の根拠
ここが最大の関門です。多くの計画書が「月商○○円」と結論だけを書き、根拠を書きません。審査で必ず問われるのは、その数字の積み上げです。
売上は必ず分解して書きます。記入例:
- 客単価 × 客数 × 稼働日数で組み立てる(例:単価8,000円 × 1日6名 × 25日 = 月商120万円)
- 客数の根拠:席数・商圏人口・チラシ反応率・既存見込み客リストなど、外部から検証できる数字にひもづける
- 初月からフル稼働にしない。立ち上がりカーブ(例:初月40%→6ヶ月目に80%)を織り込む方が、かえって信頼される
「なぜこの客数なのか」を一段深く問い続けること。そこにこそ、AIと共に考える価値があります。自動で埋まった数字ではなく、問いに答え続けて残った数字だけが面談で通用します。
4. 資金計画(設備資金・運転資金)
必要資金と調達方法を左右で一致させます。ここは1円単位で整合していることが絶対条件です。合計が合わない計画書は、それだけで内容を疑われます。
- 設備資金:内装・機械・車両など、見積書に基づいた実額を記載
- 運転資金:黒字化するまでの数ヶ月分の固定費・変動費を計上(ここを過小に見積もる創業者が非常に多い)
- 自己資金と借入の比率:自己資金の割合は、あなたがどれだけ準備してきたかの証明になる
5. 収支計画(損益予測)
売上から固定費・変動費を引き、利益が残る構造を示します。ここで大切なのは楽観的な数字を並べることではなく、返済しながら事業が回ることを示すことです。売上・固定費・変動費を入力すれば月次・年次の損益(P&L)やキャッシュフローに落とし込めます。財務の専門知識がなくても、まず構造を作り、そこから前提を検証していく順番が実戦的です。
補助金申請の場合の違い
ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金では、審査の重心が少し変わります。融資が「返済できるか」を見るのに対し、補助金は「その投資で事業がどう伸びるか」の政策的な説得力を見ます。
- 補助対象の投資が、売上・生産性向上にどうつながるかを因果で示す
- 「導入前→導入後」で何がどれだけ改善するのかを定量的に書く
- 加点項目(賃上げ計画など)の要件を公募要領で確認し、計画に織り込む
記入例を「守れる計画」に変えるために
ここまでの記入例に共通するのは、数字には必ず根拠がひもづくという一点です。融資担当者も投資家も、完璧な数字ではなく、その数字を自分の言葉で説明できるオペレーターを見ています。実行者であって、見物人ではない人を。
とはいえ、一人で問いを立て続けるのは簡単ではありません。「その客数の前提は本当に妥当か」「この固定費、抜けはないか」——盲点は自分では見えないものです。
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